先日、安倍首相が、「4-7-8呼吸法をするようになってから調子がいい」と発言したことが広く報道されて、この呼吸法のことが有名になりました。4-7-8呼吸法は、比較的簡単な呼吸法で、それを4回繰り返すだけで、気分が落ち着いてリラックスできるそうです。考案者は米国の著名な健康医学の権威です。
呼吸一つでそんなに効果があるのか?と少し疑いたくなってしまいますが、呼吸法は古来から様々な方法で提唱されている健康法です。そして、その効果が現代科学で実証されています。精神的に追い詰められた人が、呼吸が早くなり過ぎて過呼吸となり場合によっては失神してしまうこともあります。しかもこの発作は習慣になります。過呼吸とまではいかなくても、焦った時、怒った時には人間の呼吸は速くなります。気分が安定しているときには、呼吸は比較的ゆっくりしています。
呼吸法とは、何か不安なこと、いらだつことが起きた時にも、落ち着いているときの呼吸をすることによって不安や苛立ちを鎮めようというものです。さまざまなスポーツや宗教などでも、呼吸を整えて集中力を上げる方法が使われています。
私たちの日常生活でも、本能的に、何かしようと神経を集中するときには深呼吸をします。この本能的な深呼吸をもっと進化させて、心や体を良い方向へコントロールしようとするのが呼吸法です。
4-7-8呼吸法
考案者アリゾナ大学医学部のアンドリュー・ウェイル教授が提唱する呼吸法で、4つ数えながら鼻から息を吸い、7つ数えながら息を止め、その後、8つ数えながら口から息を吐ききる、ということを繰り返すだけです。
4回を1セットとします。1セット1分程度のごく短い呼吸法です。数える速度は自分の速度なので、特に大きな負担を感じることはありません。とても手軽なので、なにか緊張を感じた時にすぐに実行できます。
ヨガの呼吸法
ヨガは日本では健康維持やダイエットのためのエクササイズのように扱われていますが、もともとはインドの伝統的な宗教です。体を鍛えることを宗教的に常用な修行ととらえているために、日本ではエクササイズのように普及しました。その鍛錬の一つに呼吸法があります。
クムバカといわれる呼吸法で、鼻を片方ずつ指で閉じて吸う、止める、吐く、止める、吸うという方法で呼吸します。この呼吸法は、呼吸を止めることを重視します。
コヒーレンス法
コヒーレンス法はハートマス財団が推奨しているメンタルトレーニング法の1つです。ゆっくりと決まったリズムで呼吸することで心拍を整え気分を落ちつけようとするものです。
椅子に腰かけて、4秒吸い4秒吐く呼吸を1〜3分続けて、その呼吸法を続けながら、共感、感謝、いたわりなどのプラスのイメージを連想します。毎日1〜3回練習します。この呼吸練習法の特徴は心臓付近に神経を集中させて、主に心拍をコントロールするものです。
丹田呼吸法
丹田呼吸法は、日本の呼吸法の中でも最も有名なものの一つですが、いろいろな流派があります。
それらの流派の一つに臍下丹田呼吸法というものがあります。この呼吸法は、おへその指5本下にある丹田というところに意識を向けて行う呼吸法です。
丹田呼吸法は腹式呼吸をすることから始めます。鼻呼吸が基本です。まず最初に、息をすべて吐き切ります。吐く時は口でも鼻でも構いませんが吐くときにはおなかを凹ませます。全部吐き切ったところでゆっくり鼻で息を吸います。吸うときにはおなかを膨らませます。
両手で丹田を押さえながら、吐くときにはおなかが凹んでいるか、吸うときにはおなかが膨らんでいるかを確認します。おなかを意識して凹ませたり膨らませたりするので丹田に力が入ります。
よく、覚悟を決めることを腹をくくるといいます。おなかに力が入ると気持ちがしっかりするからです。また、おなか周りにちからが入るので、血行もよくなります。
丹田呼吸法では、最初は5分ぐらい繰り返し、慣れれば30分ぐらい続ければよいといわれています。おなかに意識を集中して5分以上丹田呼吸法を続けると脳内のセロトニンが増えるといわれています。やってみるとわかるのですが結構な腹筋運動にもなります。
腹式呼吸
丹田呼吸法は腹式呼吸の進化型ともいえる呼吸法ですが、単に腹式呼吸をするだけでも気分を穏やかにするのに役立ちます。
難しい呼吸法は指導者の下で
従来から呼吸法は心にも肉体にも良い影響を及ぼすものといわれていました。それは、あくまで自分にあったリズムで行われなければなりません。普段より、多少ゆっくりした呼吸を行うことによって、気分を落ち着けて内臓を鍛えます。特に、気分を落ち着ける効果は非常に大きく、また、即効性があります。
しかし、一方で呼吸法は体に負担をかけるともいわれています。非常に長い時間呼吸を止めなければならない呼吸法方がありますが、そのような呼吸法は、指導者の指示に基づいて行いましょう。息を止める時間が長い呼吸法は体に大きな負担になります。適度な負担を与えてそれに耐えることが鍛錬というものですが、時にはその負担が心臓や肺などに悪影響を与えることもあります。
また、必要以上に酸素を吸い込むことは体内の活性酸素を増やすことになります。極端な呼吸法は手軽には取り入れにくいものです。