アラキドン酸はビタミンFと呼ばれる必須脂肪酸で不飽和脂肪酸の一種です。
アラキドン酸は植物にはほとんど含まれず、一方でほとんどの動物に含まれているため、動物性の食品から摂取します。細胞膜を形成するリン脂質の構成成分で、特に脳に多く存在します。
記憶力、学習能力、認知機能を活性化する働きを持っており、気力の低下などに効果があるといわれています。
体内での作用
アラキドン酸は植物油としてのリノール酸を摂取して、体内でγ-リノレン酸に合成されジ・ホモγ-リノレン酸に変化してアラキドン酸となります。
アラキドン酸カスケード(体内の様々な調整機能)
細胞膜に含まれているアラキドン酸は細胞膜から遊離してアラキドン酸カスケードと呼ばれる一連の生合成反応を起こします。
血管平滑筋の弛緩、拡張、収縮、気管支平滑筋の弛緩と収縮、子宮筋の収縮、血小板凝集、抑制と促進、白血球遊走の好酸球遊走、ブラジキニンの増強、胃粘膜粘液分泌の促進、胃酸分泌の抑制などに働きます。
また、アレルギー反応、炎症、傷みなどの免疫機能を調整します。他にも、高血圧を予防したり、コレステロール値をコントロールします。
脳を育てる
脳の神経細胞の主成分となり、神経伝達、神経新生を促進します。このため、記憶力、認知能力など向上させます。
特に胎児や乳児は脳細胞を爆発的に新生するためアラキドン酸は非常に重要な栄養素になります。一歳未満の乳児は自分でアラキドン酸の合成ができないため粉ミルクにも配合されています。
幸せになる
アラキドン酸は脳の中で幸福感をもたらすアナンダマイドという物質に変化します。
アラキドン酸欠乏症
現代日本の一般的な食事をしていれば欠乏症が起きることはありません。しかし、極端な食事制限などで欠乏してしまうことはあります。もし、欠乏した場合には記憶力や認知能力の低下がおきます。
アラキドン酸過剰症
肉類、リノール酸を含む油脂類を食べ過ぎるとアラキドン酸が過剰になることがあります。アラキドン酸の過剰摂取はガン、動脈硬化、アトピー性湿疹などの原因になります。アラキドン酸は過剰に摂取すると、本来の効果が逆に作用するという性質があります。
アラキドン酸を多く含む食品
肉類、魚類、乳製品、卵などの動物性食品に多く含まれます。オレイン酸(オリーブ油など)、βカロテンとともに摂取するとアラキドン酸の働きをよくするいいわれています。
アラキドン酸の作用を阻害するもの
アラキドン酸カスケードを阻害する鎮痛剤
- シクロオキシゲナーゼ阻害薬(非ステロイド系抗炎症薬)=アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、フェンブフェン、ロキソプロフェンなど
- ホスホリパーゼA2を阻害する副腎皮質ホルモン=抗炎症作用
- リポキシゲナーゼ阻害薬=抗喘息作用、抗鼻炎作用
最後に
アラキドン酸は脂肪酸でありながらビタミンに分類されている栄養素で、生体のあらゆる機能を調整して、なおかつ脳の働きにも大きく作用します。しかし、過剰摂取は肥満やアレルギーなどを引き起こします。現代の食生活では、欠乏よりも過剰摂取のほうが心配です。ただし、高齢者においては、アラキドン酸不足が起きており、それが認知症の要因になっています。