うなぎには、ビタミンA・B1・D・EやEPA・DHA、カリウム、カルシウム、リンが含まれています。
うなぎの効能
うなぎは抗酸化物質であるビタミンA・Eをたっぷりと含んでいるので、免疫力を高め、ガン予防に有効です。また、ビタミンB1・B2は疲労を回復し、体力増強をはかります。ビタミンD、カリウム、カルシウム、EPA・DHAは骨粗鬆症や動脈硬化、高血圧などを防ぎます。
うなぎは、蒲焼きならすべて食べつくすことができ、むだなく栄養成分を摂取できます。にんにくや山いもと一緒に食べると、夏バテ防止に役立ちます。
土用の丑の日、うなぎは一人一匹?家族で一匹?
土用の丑の日には、やっぱりうなぎを食べたいもの!
しかし、むしろ栄養価が高すぎるうなぎは、特定の栄養成分の摂り過ぎに注意する必要があるのです。
そもそも何故、土用の丑の日にうなぎ?
今年も間もなく「土曜のうなぎの日」、じゃなかった、『土用の丑の日』がやって来ます。
それと同時に、うなぎの値段はうなぎ登り!
「土用の丑の日だからって、無理にうなぎをたべなきゃいけないって訳じゃないでしょう!?」と、声を大にして訴えたい主婦は少なくないと思われます。
それに、土用の丑の日にうなぎを食べたからと言って、本当に夏バテが防止できるのかと言うと、これまた微妙!!
アンケート調査によると、土用の丑の日にうなぎを食べる人の割合は約5割弱と言いますから、もし本当に土用の丑の日にうなぎを食べて元気になれるのなら、半分程度の日本人は夏バテをしない事になります。まさしく健康列島「日本」状態です。
でも、現実は違いますよねぇ!? 夏も終盤戦に近付くと、至る所でバテバテという人を見かけます。つまり、うなぎを食べても食べなくても、夏バテする人はする、夏バテしない人はしない!! これが現実だとみるべきでしょう。
そもそも土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は江戸時代に始まったものですが、元はと言えば、閑古鳥の鳴いていた夏場のうなぎ屋さんを救うべく、食博士としても知られていた医師:平賀源内(ひらがげんない)が提案した苦肉の策でした。当時の江戸では、土用の丑の日は、「う」の付く食べ物を食べて暑い夏に打ち勝とうというしゃれた通説がありましたから、うなぎ屋の前に、“本日丑の日”と書いた張り紙を出すだけで、きっと客が押し寄せる! なんと、源内はそう言い切り、その通りになったのです。
老けずに長生きにはうなぎ
思えば、バレンタインのチョコレートや節分の太巻き寿司と同じようなノリで始まったのが土用の丑の日のうなぎ。改めて、日本人は昔から商売上手だったんだなぁと感心させられます。しかし、その発想は日本中に根付き、土用の丑の日にはうなぎを食べてスタミナを付け、夏バテを防止するという定説が芽を出し、200年以上たった今でも毎年見事に花を咲かせているのです。それはすごい事であると同時に、これだけ科学が発達し、研究が進んだ現代社会においても共感されているのには、それなりの理由があると見ていいでしょう。そして、その最大の理由が、『ビタミンA』と『ビタミンB1』の存在だろうと思われます。
特に「脳の中枢神経」や「手足の末梢神経」に親密な関係のあるビタミンB1は、全身の神経機能を巧みにコントロールしてくれる優秀なビタミン。また、糖質を燃やし、エネルギーを作り出すところから、筋肉の疲労回復にも一役買います。さらに、胃腸の働きを促す作用も持っていて、暑い夏を元気に乗り切るためには必要不可欠であるとみて間違いないのです。
一方、ビタミンAは、肌や粘膜の潤いとともにバリア機能を高め、免疫力を高めるところから、年がら年中『元気に・美しく』を実践するにはなくてはならないビタミン。目にもいいと言われ、今ではアンチエイジング物質として人気と支持を集めています。
うなぎには、そんなビタミンB1が牛乳の約25倍、ビタミンAが卵の約6倍も含まれています。さらに、ビタミンB2・ビタミンD・ビタミンEも豊富で、牛乳嫌いのお父さんや卵アレルギーの子供たちにとっては、苦手なものに頼らずとも、うなぎを食べれば必要なビタミン摂取ができる。しかも、美味しい!老若男女を問わず大好きと来ているのですから、こんなに素晴らしい食材はそうはありません。土用の丑の日のうなぎは、定着すべきして定着した習慣だと言えそうです。
ボケずに長生きにもうなぎ
ビタミンの他にタンパク質も脂質も豊富で、カルシウムや鉄分もしっかりと含むうなぎは、栄養価の高い食品である事を認めざるを得ません。確かに、うなぎは全体の20%が脂肪という事で、この高脂肪を取り上げ、必ずしも体にいいとは言い切れないという人もいます。特にお年寄りの中には、うなぎの脂っこさが堪えると言う人は多く、若い女性でも、太るのを危惧される方もいらっしゃるでしょう。
しかし、うなぎの脂肪は、EPAこと「エイコサペンタエン酸」とDHAこと「ドコサヘキサエン酸」を多量に含む優秀な脂肪で、安物の贅肉ではありません。EPAにDHAと言えば、今では誰もが知る脳活性物質で、年を取れば取るほど重要になるのです。
このEPAとDHAはオメガ3脂肪酸とも呼ばれ、その効能が大変注目されている栄養素です。
つまりうなぎには、ボケ防止や肌老化、骨老化を防ぐ作用があり、アンチエイジング効果大! さらに、免疫力を高める事で、風邪や鼻炎などの感染症やアレルギーは勿論、ガンや動脈硬化、心筋梗塞などの成人病も予防してくれるのです。まさしく元気で綺麗に長生きを実現させてくれる食材だと言えるでしょう。
そう、「うなぎを食べて、うなぎのように長〜い人生を!」という事になるのです。
こうした事を知ってか知らずか、日本では万葉の時代から滋養強壮食としてもてはやされて来たうなぎ。今さら土用の丑の日のうなぎを否定するのは、正直なところ、いささか難しいと言えるでしょう。
土用の丑の日のうなぎは家族で1匹が理想
ならば、うなぎで元気にという主張には弱点がないのかと言えば、決してそんな事はありません。栄養価が高いが故の注意点というのもちゃんと存在するのです。やはり脂肪はあくまでも脂肪ですから、いくらEPAやDHAが豊富でも、食べ過ぎは禁物。胃もたれや肥満の引き金になる可能性は十分持っています。
そして、一番怖いのがビタミンの過剰摂取です。
前述のように、うなぎには特にビタミンAが豊富で、100gあたりの含有量は2400μg、1匹で5000μgを超える事もしばしばです。これは、蒲焼き1切れ食べれば、1日に必要なビタミンAが十二分に賄える量で、1匹食べた暁には、3日分ものビタミンAを補充した事になるのです。しかも、ビタミンAは水に溶けない脂溶性のため、必要以上に取り込むと、血中や肝臓に蓄積され、肝臓障害を引き起こします。さらに、骨を強化するどころか、骨を脆くしてしまうので逆効果です。
もっとも、急性の肝臓障害を引き起こすには、1日3万3000μgのビタミンAが必要で、うなぎ6匹以上にも相当しますから、庶民には縁遠い恐怖でしょう。ですが、脂溶性のビタミンは、一度体内に入ると中々消滅しないため、毎日の許容量を定める事が必要になります。ビタミンAの場合、その目安は30代〜40代の男性で900μg、30代〜40代の女性で700μg。そして、その上限は男女を問わず3000μgです。こうなると、うなぎ1匹食べれば、たちまち超過してしまうではありませんか!!
さらに、ビタミンAは卵や牛乳、チーズやバターと言った身近な乳製品にも多量に含まれています。なんと、緑茶や味付けのりも思いのほかビタミンA豊富な食品です。そのため、例えうなぎを1切れに抑えても、1日の上限を突破する可能性は低くなく、昼もうなぎ、夜もうなぎは危険行為かも知れないのです。
また、同じ脂溶性のビタミンDの過剰摂取は、血中のカルシウム濃度が高すぎる高カルシウム血症に極めて近い状態を招き、さらには高血圧症へと進んでいく訳です。特に偏頭痛や貧血に頻繁に見舞われるという方は要注意。やがて『ビタミン中毒症』にまで到達する可能性も出てくるので、改めて食生活やサプリメントの服用を見直す必要があるでしょう。
こうした事を考えると、土用の丑の日のうなぎは、1匹を家族で仲良く分け合って食べる! これが理想なのかも知れません。
<ライター:健康通(けんこうどおり)>