ムチンは、動物の上皮性細胞、粘膜、唾液(だえき)腺などが生産する粘液性物質です。
糖たんぱく質の一種とされ、アミノ酸がつながったポリペプチド鎖に糖鎖が枝状に結合した構造をもっています。
ムチンは「粘液素」「粘素」とも呼ばれ、密度の濃い粘りけがあります。粘膜を潤したり、摩擦を防いだり、細菌が侵入するのを防護する役目を担っています。
ムチンの効能
ムチンの栄養効果として、ドライアイ予防、胃炎・胃潰瘍の予防、抗ウイルス作用、疲労回復、脂肪肝・感染症・アレルギー症状の予防などが期待できます。
ドライアイ改善
ムチンは、人間の涙や唾液、胃液といった分泌物や胃腸の粘液などにも含まれているため、優れた保水力を持っています。
目の表面を覆う涙は油層・水層・ムチン層によって構成されていることで水分を角膜に密着させて蒸発を防ぎ、目の潤いを保っているため、涙の性質が低下すると、涙が均等に目の表面を覆うことができなくなります。そうなると異物や雑菌が目に入りやすくなり、さまざまな目の病気を引き起こすことになるといわれています。
ムチンは目の角膜に最も近いムチン層に含まれており、涙を目に繋ぎ止めるために必要な成分であるため、涙の働きを安定させることができ、ドライアイの改善などに有効とされています。
抗ウイルス作用
胃の粘膜や鼻、口などの呼吸器の粘膜にはムチンが含まれているため、胃酸を防いだり、風邪やインフルエンザなどのウイルスの侵入を防いだりする作用があるとされています。
疲労回復
タンパク質は体のさまざまな組織を作るとともに、体を動かすエネルギー源にもなる大切な栄養素ですが、ムチンにはタンパク質を分解する酵素が含まれているため、食品から摂取したタンパク質を吸収しやすくする働きがあるとされています。
それにより、タンパク質をエネルギー源として効率よく利用することができるようになるため、疲労回復効果も期待できます。
脂肪肝予防
ムチンによって胃の粘膜が保護されることでアルコールが体内に吸収されるのが遅くなり、肝臓が無理なくアルコールを処理できるように助けるという働きもあります。アルコールによる肝臓の負担が軽減されると肝臓が十分に機能し、結果として効率よく中性脂肪を分解することができるようになるため、脂肪肝の予防にも効果を発揮するとされています。
感染症やアレルギー症状の予防にも
ムチンには、粘り気のある液体で粘膜を潤すことによって粘膜の損傷を防ぐ作用があるので、胃のトラブルの予防・改善、鼻の粘膜の健康には欠かせない成分です。風邪やインフルエンザなどの感染症にもかかりにくくなります。また、鼻やのどなどの粘膜を保護することで、アレルギー症状の予防や改善も期待できます。
過剰摂取の心配はナシ!
ムチンには、タンパク質を効率よく分解する効果もあります。筋肉や臓器の構成成分であるタンパク質の吸収を高めることは、健康な体づくりの基本です。ムチンを含む食品を何種類か組み合わせて食べると、よりいっそう効果的です。
ちなみに、過剰摂取の害についての報告は確認されていないので、摂りすぎの心配はないと考えられます。
加熱調理はできるだけ避けて
ムチンの持つヌルヌルのタンパク質分解酵素は熱に弱いのが難点で、60度程度の加熱でパワーダウンしてしまいます。
したがって、ムチンの栄養を無駄なく摂取したいなら、加熱が必要な料理は避けたほうがベターです。生の食材を和えたり混ぜたりして食べるほうが、効果的に栄養を摂取できます。
【補足】芋や野菜のネバネバはムチンではありません!
オクラや山芋、モロヘイヤなどに含まれるぬめり成分がムチンと呼ばれることがあります。しかし、これは高分子の多糖類とたんぱく質が結合したもので、動物の粘液に含まれるムチンとは異なります。