秋になると、キノコの帝王とも言えるマツタケをはじめ、多種多様のキノコたちが店頭に並び、家庭でも食卓を賑わわします。ちなみに、10月15日は「キノコの日」です。でも、このキノコたち、よくよく見ると、なんとも謎多き物体!
そんな気がしませんか?
実際、キノコ類は実に豊富な栄養と効果効能、そして秘密を持つ不思議な生物です。
そこで今回は、そんな魅力満載のキノコの不思議に迫ってみたいと思います。
キノコは何者? 野菜なのか、野菜ではないのか?
日本人はキノコがお好き!?
キノコはちっちゃくて可愛い?
所変わればのキノコたち
キノコの正体
世にも不思議なキノコの人生
キノコは本当に厄介ものなの?
キノコの原木栽培とは?
何故マツタケは人工栽培できないの?
“香りマツタケ味シメジ”の正体
キノコの力は酵素の力
これでキノコ嫌いは克服できるかも!?
キノコは野菜なの?
スーパーや食料品店の野菜売り場に行くと、かならず並んでいるキノコたち!! もちろん、野菜専門に取り扱う八百屋さんでも見かけます。
とは言え、キノコはどれも、どこからどう見ても、葉物でもない、根菜でもない。アサツキやアスパラのように茎を食べる茎菜類(けいさいるい)でもなく、ブロッコリーや菜の花のように花の部分を食べる花菜類でもない。トマトやカボチャのように実を食べる果菜類でもない。かと言って、トウモロコシのような穀物でもなく、豆でもなく、もやしやカイワレのような発芽野菜にも見えません。
そう、八百屋さんの店頭に並ぶ他の野菜とは完全に一線を画しているのがキノコです。そう、キノコは野菜ではありません。
そもそも「野菜」は草本(そうほん)である事と定められていますから、はやい話「草」です。
そして、利用する部位によって先のような葉菜類や根菜類、茎菜類・果菜類・果菜類と分類されているのです。さらに、田畑に栽培される事という定義もあるため、豆類や穀物類も該当する訳ですが、あくまでも野菜 = 食べられる植物とされています。
ところが、キノコは草木ではなく、田畑で栽培するものでもありません。さらに、光合成をしないキノコ類は植物にも分類されないため、野菜になりたくてもなれないのです。
キノコは何故、野菜売り場に並んでいるの?
キノコが植物ではないというのはちょっとビックリですが、野菜ではないというのは納得できるところでしょう。ではでは、何故、キノコは野菜売り場に並んでいるのでしょうか?
これについては明確な理由や定義は存在しないものと見られます。ただ、魚屋さんが水中で捕れる物を扱うのに対し、八百屋さんは陸地で穫れる物を扱う。
昔の日本には、そんな暗黙のうちのルールがありました。今でもお魚売り場に魚介ではなく植物に分類される岩のりやワカメのような海草類が並んでいるのはそのためです。そして、それと全く同じ理屈で、八百屋さんには野山で収穫されたキノコが売られていました。そもそも「八百屋」とは、『八百(やお)=百の八倍。はっぴゃく。数がきわめて多いこと。』ということで、“多種多様の物を扱うお店”という意味で付けられた呼称ですから、キノコがあっても決して不思議ではなかったのです。
ちなみに、大昔の日本では、肉類は狩りに出て仕留めた獲物から摂取するもの。まさに自給自足の代表格のような食材で、鹿やイノシシ、熊と言ったジビエ料理が主流でした。今のように牛や豚を育てて生計を立てる仕事はありませんでしたから、お肉屋さんはなく、食品は基本的に、海のものはお魚屋さんで、陸のものは八百屋さんで購入するものだったんですね。
なるほど、それでキノコは野菜ではないけど、八百屋さんやスーパーの野菜売り場に並んでいるという訳です。それにしても、植物ではないとなると、一体全体キノコは何者なのでしょうか? 新たな疑問が湧いてきます。
キノコは何者?
この広い地球上には多種多様の物体が存在します。雑な言い方をすれば、私たち人間も物体、「物」です。しかし、その物の中には、鉄や金・銀・銅のように、生命を持たない物も沢山あります。そして、それら生命を持たない物は成長しません。そこで大昔の人は、成長できる生命体を『生物』、成長できない非生命体を『鉱物』と分類しました。
ところが、鉱物は全てが自力で動く事のできない物体ですが、生物は違います。犬や猫のように自力で動き回れるものもいれば、花や木のように自力で動けない物もいるではありませんか!! そこで、自力で動ける生物を『動物』、自力で動けない生物を『植物』と、さらに2分する事にしたのです。
つまり、この世の中の全ての物体が生物か鉱物で、生物は動ければ動物、動けなければ植物という訳! 実に単純ですが、実に分かりやすい分け方だと言えるでしょう。そして、私たち人間は生物界の動物です。他に動物界には鳥や魚、虫も含まれ、古代では恐竜が動物界の支配者だった訳です。
一方、植物界では草木が主流でしたが、全く見た目の異なるキノコや細菌類も仲間として扱われていました。何しろ、キノコも細菌も、自力で繁殖は出来ても、自動は出来ないのですからしかたありません。“おまえたちは動物ではない!”と言われ、植物界に送り込まれればそれまでです。
されど、植物界としても、主流である草木たちは葉緑素を持ち、自分たちは光合成をして自活できるという自負がありました。しかし、光合成の出来ないキノコや細菌たちは、そんな草木の作り出した栄養を頂戴し、他力本願で生命維持するよりないのです。そのため、まるで厄介者のように扱われていました。
また、動物界にも同じように、自動は出来ても、小さくて単細胞で、とてもじゃないが独り立ち出来ないというような微生物は多く、ついに、動物界から独立した微生物たちによる『原生生物界』と、植物界から独立した菌類による『菌界』という新たな世界が作られる事となったのです。
ですが、自活出来ない菌類と言っても、カビや酵母、そしてキノコのように細胞核を持つ「真核生物」もいれば、大腸菌のように明確な細胞核を持たない「原核生物」もいます。前者は後者が進化し、様々な機能を身に付けたいわゆる優等生組です。それに対し、後者は今もなお、野生の本能のまま生き続ける単細胞生物で、一緒にされてはたまったものではない! そう言いたくなる気持ちは分かります。そこで、ひとまず前者を「菌類」として菌界に置き、後者は同じ単細胞生物が主流の原生生物界へ送り込む事としました。
ところが、動物界から独立した原生生物界の生物は、単細胞と言っても実は真核生物で、今度は肉体構造上、ある程度の優等生集団です。となると、やはり単細胞でも原核細胞のヤツらとは一緒にして欲しくない!! という苦情が出るのは目に見えているでしょう。そこで、しかたありません。ここにもう一つ「モネラ」という新しい分類を作る事にしました。こうして、大腸菌などのモネラ類が所属する『モネラ界』が生まれ、生物界は5区分となったのです。
この分け方は『生物五界説』と呼ばれ、今の動物界の支配者である人間が考え出したものですから、自分たちに都合良く順位付けがされています。人の属する動物界が最上位。その人に悪影響を及ぼす事の多いモネラ界が最下位委で、キノコの属する菌類は、植物界に続く第3位です。何故なら、キノコたちは、我々動物にも、植物にも多大なるメリットをもたらせてくれるからなんですねぇ。
という事で、キノコは決して怪しい生物ではありません。植物ではありませんが、動植物に多くの利益を与えてくれる菌界の幹部とも言える存在で、何を隠そう、「菌」という漢字の訓読みは“キノコ”です。そして、正式には菌界の「菌茸類(きんたけるい)」と言います。ならば、キノコたちは、動物界や植物界にどのようなメリットをもたらせてくれるのでしょうか?
次のパートで、じっくり探ってみましょう。きっとみんな、キノコ大好き、素敵なキノコ男子・キノコ女子になれるはずですよ。
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