「あなたの部屋、あなたの指、あなたの息・・・臭いです。」と言われれば、愛煙家の方はムッとされるでしょう。
でも、これは事実です。タバコを吸わない人にとってヤニ臭は悪臭以外の何物でもありません。
シニア世代が青春を過ごした頃には、タバコはおしゃれな嗜好品としてもてはやされることもありました。女性の喫煙率が増えたのもこの時期です。高価なシガレットケースなども流行しました。ライターのコレクターも多い年代です。
あれから30年、今はタバコに対する考え方はずいぶん変わりました。今やタバコははっきり有害なものと認識されているのです。
タバコの有害性
タバコの煙に含まれている成分の主なものは、ニコチン、タール、一酸化炭素などです。
ニコチン
「毒物および劇物取締法」で毒物指定される物質で、ニコチンの毒性の強さは青酸化合物の5倍ともいわれています。大人の致死量は40-60mgといわれています。ニコチン自体には発がん性はありませんが、体内に入ってから生成されるニトロソアミンという物質に発がん性があります。
タール
タールとは、タバコに含まれている有機物が火をつけることによって熱分解して生成される茶褐色の液体です。ヤニともいわれます。タールの中には、カドミウム、ニッケル、アルデヒド、シアン化水素、ベンゼン、ニトロサミンなどが含まれています。カドミウム、ニッケル、アルデヒド、ニトロサミンなどは強い発がん性があります。またシアンは有名な毒薬で、殺人事件や自殺などに使われる薬品としてお馴染みのものです。
タールは長期間、気管や肺にへばりついて蓄積していきます。
一酸化炭素
一酸化炭素はヘモグロビンと強く結合します。本来ヘモグロビンは酸素と結合して体内に酸素を運搬しますが、一酸化炭素のほうが結合力が強いために、体内に一酸化炭素が入ると酸素不足になります。一酸化炭素中毒は致死率が非常に高いことでも知られる猛毒です。
タバコの成分はとにかく有害物質のオンパレードなのです。タバコは、現在日本で流通している嗜好品の中では異色としか言いようがないほどに有害物質が多い嗜好品です。
タバコがやめられない理由
タバコがやめられなくなる理由はニコチン依存症になるためです。ニコチンは体内に入ると、瞬時に吸収され、ドーパミンやノルアドレナリン、アドレナリンの分泌を促進します。このため、幸福感や昂揚感を味わうことができるので、心が癒される、気分がすっきりするという感覚が味わえます。
そして、ニコチンの濃度が薄くなると、これらの神経伝達物質の分泌が少なくなり虚脱感や無力感にとらわれるようになります。またタバコが吸いたくなるというわけです。これがニコチン依存症です。
この依存メカニズム自体はアルコール、カフェイン、大麻や覚醒剤、モルヒネなども同じで、神経伝達物質の分泌度合が激しいほど依存性が強く妄想や幻覚、幻聴の要因になります。また、依存性が強いほど、どんなことをしても欲しくなるために犯罪を犯す人が増えるのです。
タバコは強い依存性があるために、いかに高率の税金をかけようとも、いかに有毒性の宣伝をしようとも、それでも吸いたいという人があとを断たないのです。
タバコの害
健康被害
タバコを吸うと、まずニコチンの毒性が体を蝕みます。家族に喫煙者がいると乳幼児突然死症候群のリスクが上がるといわれています。
また、長期に発がん性物質を体内に蓄積するので、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、口腔がんなどのほかにも胃がんや肝臓がん、食道がん、子宮頸がんなどのリスクが高まります。動脈硬化が進むので高血圧、脳卒中、心筋梗塞などのリスクが高まります。ぜんそくなどの呼吸器疾患を悪化させます。
また、ニコチンはビタミンCを破壊するためカルシウムの吸収が悪くなり、骨粗しょう症リスクが高まります。
喫煙がEDリスクを上げるのもよく知られています。
精神的被害
健康被害の中であまり知られていないのが、うつ病リスクです。タバコは神経伝達物質の分泌に作用しますから気分の不調を起こしやすいのです。また、常にタバコを吸うために席を外す、タバコを吸う場所を探す、タバコの火の始末をしなければいけないなどのストレスを抱えることになります。
経済的被害
タバコは決して安くない嗜好品です。経済的にも大きな負担になります。
火事
全国の火事の原因で最も多いのがタバコの火の不始末です。寝タバコ、飲酒しながらの喫煙などタバコの火の不始末は、もう長い間火事の原因の首位の座を守り続けているのです。
美容的被害
タバコは毒性の強い物質を日常的に体内に入れるために、体は常に酸化物質や老廃物を抱え込んでいます。抗酸化性の強いビタミンやミネラルを大量に消費するため体は実年齢よりも老化しており、老けて見える人が多いのです。
禁煙のすすめ
タバコは百害あって一利なしですから、禁煙を強くおすすめします。よく「タバコをやめるぐらいなら死んでもいい」という方がおられますが、タバコの害で死ぬのはそう甘くはありません。長期療養、高額医療費、そして何よりも病気の苦しみを味わわなければならないのです。
もちろん世の中の病気リスクや経済的リスクはタバコだけではありません。だからと言ってなにも大きな不利益を抱え込むこともないはずです。今ならまだ間に合います!
ニコチンの離脱症状
ニコチンは依存性のある毒物なので、急に摂取を止めると離脱症状が現れます。離脱症状は禁煙三日目から三週間程度続きます。イライラしたりそわそわしたり物事に集中できない、不安感に襲われるなどの症状のほかに、頭痛、体がだるい、眠いまたは不眠、便秘などです。のどが渇くのもよくある離脱症状で、離脱症状の程度は個人差が大きいので、精神力で我慢できてしまう場合もあれば、耐え切れずにタバコを吸ってしまう場合もあります。
離脱症状を克服するためには、深呼吸、散歩、軽い運動、昼寝、ぬるめのお湯で入浴、シャワー、趣味を楽しむなどの方法があります。また水分を十分摂る、カフェイン、アルコールを慎むなども離脱症状を軽くするのに役立ちます。
禁煙の利益
禁煙した翌日からメリットがあります。
- 食事がおいしくなります。
- タバコ代が要らなくなります。
- 勤務時間中や会議、商談などが長時間になっても中座する必要がなくなります。喫煙しない人は、その人が中座してタバコを吸ってきたのはすぐにわかります。
- 火の始末の必要がなくなります。
一か月もすると更にメリットが増えてきます。
- 人間関係にも影響しかねない、しつこい咳や痰、咳払いなどが止まり呼吸が楽になります。カラオケでもしっかり歌えます。
- 朝の目覚めがよくなります。
- 肌荒れが治り外観が若返ります。
- 衣服、部屋、口などのヤニ臭が消えます。
そして人生において、『健康』というかけがえのないものをタバコから守れるのです。
さまざまな禁煙方法
禁断症状を緩和するために段階的にニコチンの摂取量を落としていく方法
ニコチンパッチ、ニコチンガム、離縁パイプなどがあります。
禁煙外来もこの方法です。
一定の基準を満たした場合(ニコチン依存症と診断された場合)には、健康保険を利用して禁煙プログラムを受けることができます。チャンピックスという薬剤を使う方法では12週間、ニコチンパッチを使う方法では8週間のプログラムをこなします。この期間を超えると自由診療となります。
ただし、チャンピックスには意識喪失などの副作用があることも分かっています。必ず医師の指示に従いながら治療する必要があります。
禁煙外来はある程度費用がかかるのと、通院という労力を使うので禁煙に失敗したくない気持ちが強くなります。
柑橘系やミントの風味を付けたものをパイプなどで吸い、タバコを吸う動作をして気分を紛らわせる
禁煙パイポや電子タバコなどがこれにあたります。
電子タバコにはニコチンを含むものもあるので、成分をよく確かめたうえで利用しなければなりません。
タバコ以外の物を食べて口さみしさを紛らわせる
ガム、昆布、飴などで気分を紛らわせる方法です。
松脂や松葉エキスなどをでタバコがまずく感じるようにする
禁煙補助食品として禁煙飴、ガム、チュアブルなどがあります。
禁煙を公言してしまう
公言して引っ込みがつかなくしてしまう方法です。
タバコの知識を身に着けて恐ろしさを良く知りタバコに対する嫌悪感を持つ方法
よく言われるのが、アレン・カー著「禁煙セラピー」です。この本を読んで禁煙を成功させた人はずいぶん多いようです。
読むだけで絶対やめられる禁煙セラピー [セラピーシリーズ] (ムックセレクト)
また、禁煙画像(タバコの害を表す写真やポスターなど)を見るのもタバコを嫌いになる方法として効果的です。禁煙画像にはけっこうおぞましいものも多くインパクトは抜群です。
一つの方法で、完全に禁煙するのは難しいかもしれませんが、二つか三つの方法を組み合わせると成功率はぐっとアップします。