どんなに体にいい栄養素も、摂りすぎると体に負担をかけます。今回は、基本的に体にいいものとされるタンパク質の摂りすぎがどんなデメリットをもたらすかについてご説明します。
まずはタンパク質の1日の摂取量を知ろう
まず、私たちが普段どの程度タンパク質を摂っているのかを知るために、働き盛りの男性によくある1日のメニューを例に、タンパク質のおおよその摂取量を挙げてみます。
朝食
- チーズトースト2枚 19.8g
- ハムエッグ 19.1g
- プレーンヨーグルト 7.6g
- 牛乳200ml 6.9g
合計:53.4g
昼食
- ご飯 5g
- 唐揚げ3個 14.8g
- エビチリ 37.1g
合計:56.9g
夕食
- 焼き鳥10本 67g
- ぶり大根 23.5g
- 冷奴 7.3g
合計:97.8g
特に意識しなくても十分摂れてしまう
通常、体重1kgあたりの1日のタンパク質必要量は、運動をしない人の場合は0.8〜1.0g、持久系の運動をする人で1.2〜1.4g、筋トレ系で1.4〜1.8gとされており、体重70kgの場合、1日56〜77gが必要量となります。
働き盛りであれば、運動習慣の有無にかかわらず、上記のような食事を普通に摂ってしまう日もあると思いますが、この3食のタンパク質摂取量の合計は208gと必要量の3倍近く、完全に摂りすぎです。
つまり、特にタンパク質摂取を意識していなくても、普通の食生活をしているだけでタンパク質の過剰摂取になっている可能性は大なのです。
摂りすぎはなぜ体に悪い?
タンパク質を必要量の2〜3倍過剰に摂る食生活を続けていると、体内での消化に時間がかかります。また、通常タンパク質はアミノ酸に分解・吸収されて肝臓から全身の細胞へと運ばれますが、摂取したタンパク質があまりに多いと、細胞へのアミノ酸補給が終わっても余分にアミノ酸が残ります。それを元に余計なタンパク質を作るわけにもいかないので、肝臓でアミノ酸を分解して別の物質を作ったり、それを体の外へ出すべく腎臓の働きが活発になったりします。つまり、タンパク質の過剰摂取はこの2つの臓器に負担がかかるのが最大のデメリットなのです。
肝臓に余計なアミノ酸を別の物質に変える仕事が加わると、アミノ酸を全身の細胞に送る作業と重なってオーバーワーク状態に陥ります。肝臓の働きすぎは全身の代謝の低下につながりますし、腎臓も働かせすぎると腎疾患などのリスクが高まります。
こんな症状があらわれることも
その他、タンパク質の過剰摂取はこんな悪影響も与えます。
- 肝臓・腎臓の働かせすぎにより、スポーツパフォーマンスが低下する
- 骨のカルシウムが失われ、骨粗鬆症になりやすくなる
- アミノ酸が脂肪に変化し、肥満の原因になる
- 肉類を大量に摂るとおならが悪臭になる
- 腸内環境の乱れにより、便秘や下痢などを引き起こす
- 動物性タンパク質に多く含まれる含硫アミノ酸により、尿路結石のリスクが高まる
子どもの集中力にも影響する?
また、最近の小中学生の集中力の欠如も、タンパク質の過剰摂取が原因ではないかといわれています。これは、多くの親が「タンパク質を摂るほど強い体になれる」という間違った認識を持ち、子どものうちから肉中心の食生活になっているためと考えられます。
この時期にこそ、タンパク質と炭水化物、ビタミン、ミネラルのバランスを意識した食生活を心がけてあげたいものですね。