雨の多いの季節、なんとなくけだるい日が続きます。いつ雨が降りだすかわからない日々、そうかと思えば土砂降りの雨、自然に外出が減ります。気分的にも、なんとなくうっとうしい時に、家の中にさわやかな香りが漂っていれば気分が変わります。
アロマテラピーは、日本語で言えば「香り療法」とでもいえるものでヨーロッパではじまった民間療法です。主に植物から抽出したアロマエッセンスを、様々な方法で揮発させてその香りで不快症状を改善させるものです。ヨーロッパでは、医療現場でもアロマテラピーが利用されています。
アロマは脳に直接届く
アロマエッセンスは、数倍に薄めて直接肌に塗ったり、入浴時に浴槽に数滴落とすことで肌を整えるなどの働きがあります。しかし、アロマテラピーの真骨頂は何と言ってもメンタル面での効果です。
鼻は脳に非常に近いので臭いは直接脳に届きます。アロマテラピーがメンタル面に効果が大きいといわれるのは脳の中でも鼻の奥、眼の奥にある視床下部に香りが直接作用するからです。視床下部は脳の中でも非常に重要な自律神経、体温調節、睡眠、セックス、新陳代謝など人間の生体としての根幹をつかさどる部分です。自律神経以外にも感情をつかさどる部分でもあります。鼻から吸収された香り成分が視床下部に直接作用することによって迅速に気分の改善を図ることができるのです。
アロマオイルの種類
アロマオイルは、大きく分けると気分を高揚させる効果を上げるものと鎮静効果を上げるものがあります。
気分を高揚させるものとしては、グレープフルーツ、ジンジャー、セージ、フェンネル、フラキンセンス、ペパーミント、ライム、レモン、レモングラス、ローズマリーなどがあります。このようなアロマオイルは、気分を高揚させ集中力を高めます。
鎮静効果があるものとしては、ラベンダー、フラキンセンス、ヒノキ、ネロリ、サンダルウッド、カモミール、イランイラン、オレンジスイートなどです。朝、目が覚めてみると今にも雨が降りそうで、なんだかやる気がしないという時には、グレープフルーツやレモン、ペパーミントなどが気分をすっきりさせてくれます。また、夜寝る前に、今日は一日何にもはかどらなかった、なんて、ムシャクシャするときにはラベンダーやオレンジスイートが気分を落ち着かせてくれます。
実は、アロマオイルは大切な人を亡くしたとか、本当に腹立たしい悔しい思いをしたときなどにも穏やかな効果があります。そういう時には、強い鎮静効果があるセントジョーンズワートがお勧めです。気をつけたいのは、鎮静効果があるアロマオイルを使ったあとでは車の運転や、危険な作業をしてはいけないということです。アロマオイルの効果は日によって人によって違います。時には眠気がさしてしまったり、集中力がなくなってしまう時もあるのです。
アロマオイルは認知症予防にも有効です
認知症の始まりは記憶をつかさどる海馬の衰えです。アロマオイルは脳に直接働きかけて海馬を刺激し海馬の細胞を増やします。認知症のごく初めの段階でアロマオイルをうまく利用すれば認知症の進行を遅らせるにとどまらず記憶力を回復させることが確認されています。
認知症予防のためのアロマオイルは、日中はレモンとローズマリーのブレンド、夜はオレンジとラベンダーのブレンドです。この組み合わせを日常的に使用することによって初期の認知症を緩和することができるといわれています。この組み合わせが、テレビで放映されてからは、この組み合わせとアロマテラピー用のネックレスをセットにした商品が多数販売されています。
お香は日本のアロマテラピー
日本で古くから愛されているお香は、もともとは中国から入ったもので、その馥郁(ふくいく)とした香りにはそれぞれに精神的な効果があります。伽羅(きゃら)や白檀(ビャクダン)などはそれを嗅ぐことによって脳波がアルファ波に変わることやエンドルフィンなどの幸福感をもたらす脳内ホルモンが分泌することが確認されています。伽羅や白檀はお香のほかにも線香として広く販売されています。
ただ、伽羅は今はあまりにも高価で手軽に日常生活に使えるものではありません。白檀も高価ではありますが、白檀を使った扇子や数珠が作られているので、身近に身に着けることができます。暑い時期に白檀の扇子を使えば、涼しさとともに上品で清潔な香りが気分をほぐしてくれます。白檀は、日本だけではなくヨーロッパでも広く愛される香りでアロマオイルとしての名前は「サンダルウッド」です。
昔、お坊さんが檀家の人々の尊敬を集めていたのは、常に伽羅や白檀のにおいをかいでいたので、情緒が安定していて冷静に物事を判断できたからかもしれません。また、仏壇に線香をくゆらせるのは、大切な人を亡くした悲しみを和らげる意味もあります。