「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(厚生労働省)におけるビタミンCの推奨量は成人で1日あたり100mgですが、実際は、野菜から摂取しようとすると期待していたほど摂れていないことがあります。そこには、どんな理由が隠れているのでしょうか?
野菜の収穫時期による含有量の違い
その要因の一つは、野菜の収穫時期の違いです。たとえば、生のほうれん草100gのビタミンC含有量を月に一度、1年間測定した実験では、7月の平均値で9mg、2月では73mgであり、実に8倍もの差があったといいます。
また、品種によっても含有量は異なります。
流通・保存のしかたの違い
さらに、流通や保存のしかたも影響しており、5度で冷蔵保存したほうれん草のビタミンC残存率は3日目で75%、5日目で65%と直線的に少なくなるという分析結果があります。
調理時の損失
また、野菜は調理を行なってから食べることの多い食材です。ビタミンCは水溶性のため水に溶けやすく、調理によって損失しやすい栄養素ですから、ゆでるなどの調理を行えば、調理前と比べて50%に減る可能性も少なくありません。「日本食品標準成分表2010」でも、ほうれん草100gあたりで、「生」では夏採り20mg、冬採り60mgと掲載されていますが、「ゆで」の項目では夏採りで10mg、冬採りで30mgと、生の50%の値となっています。
損失分を考慮した摂取が望ましい
このように、野菜は収穫から手元に届くまでに加え、購入してから家庭で保存・調理して食べるまでの間にもビタミンCは減少し、食品成分表の「生」での計算値の1/4〜1/2になっている可能性があります。つまり、これをふまえて推奨量の100mgを野菜から摂ろうとするなら、食品成分表の「生」での計算値の2〜4倍を摂取しておくのが望ましいのです。
また、喫煙者はビタミンCを消耗する量が多いため、非喫煙者よりさらに1.4倍多く摂取する必要があります。
過剰症の心配はナシ!
こんなに大雑把な計算で考えてもよいのは、ビタミンCが食事摂取基準で耐容上限量が定められていない栄養素だからです。したがって、通常の食事から摂取する場合、多く摂りすぎても余分は尿に排泄されるので、過剰症の心配はありません。
生と加熱をうまく組み合わせて
それならば、とビタミンを無駄なく効率的に摂る方法を考えると、生で食べるしかないように思えますが、野菜にはアクが強くて生では食べにくいものや、調理損失を考慮しても、加熱したほうがかさが減ってたくさん食べられ、結果的に摂取できる栄養が多くなるというものもありますので、生食と加熱をうまく組み合わせて摂取しましょう。
また、ビタミンCはいろいろな加工食品に添加されているため、無意識のうちに摂っていることもあります。
飽和を考慮して効率よくビタミンCを摂るには?
ビタミンCには天然のものと添加物とがありますが、効力や利用率に差はありません。ただし、ビタミンCを1000mg含んだドリンクを飲んでもすべてが体内で利用されるわけではなく、野菜や果物でも同じですが、摂取量が多ければ吸収率は下がり、吸収しても体が必要としない余剰分は尿から排泄されます。
人の血液中のビタミンC濃度は1日あたり400mgの摂取で飽和するといわれており、朝・昼・夕の食事ごとに100〜200mgを摂取すると、効率よくビタミンCが吸収できると考えられています。